"Big Bug"
劇場公開作は別として、配信で映画をチョイスする場合、予備知識もなくて何となく観始めてしまうケースがあるはず。そこで見つかるのが“掘り出し物”。今回は、ネットフリックス配信の新作から、そんな候補になりそうな一本を紹介したい。タイトルは"Big Bug"だ。舞台は2045年の近未来。当然のごとく、日常のあらゆる面が進化しており、本作はそんな風景からスタート。次々と登場する未来のアイテムが紹介されるだけで、テンションが上がってくる。家事を何でも完璧にこなすアンドロイド。料理に合わせて指が調理器具になったりするし、人間たちの感情をデータ化して読み取ったりできる。お掃除ロボットは家の中をピカピカに保つし、ペットの犬は何代にもわたるクローンだったりする。気分に応じて快適な香りが出てくるなど、AIによるシステム管理はパーフェクト。観ているこちらも未来生活を楽しく満喫してしまう。監督はジャン=ピエール・ジュネ。あの『アメリ』を送り出した鬼才だ。今回もポップでカラフルなビジュアルセンスは健在。視覚的な楽しさが最優先されている。そしてストーリーは、近未来作品らしく危険な方向へ進んでいく。あまりに進化したAIが人間を支配しつつある状況になっているのだが、ハリウッドのSF大作と違って、そこにはブラックなユーモアも盛り込まれて予想不能。いい意味でユルいシーンもある。生きるか死ぬかのスリリングなシチュエーションになだれ込みながらも、主人公家族それぞれが自分の愛と欲望に夢中になったりするあたりは、いかにもフランス映画っぽいかも!? アンドロイドやロボットたちが人間の感情を学ぼうとしたり、恐ろしい敵とのバトルの驚きの行く末など、ひとヒネリも、ふたヒネリもある展開が続きながら、全体ではアナログのアイテムやカルチャーへの温かみに溢れていたりして、最後まで不思議なテイストを実感!"Big Bug" ネットフリックスで配信中製作・監督・脚本/ジャン=ピエール・ジュネ 出演/イザベル・ナンティ、エルザ・ジルベルスタイン、クロード・ペロン、ステファン・ドゥ・グルート 2022年/フランス/視聴時間111分
Sentence = Hiroaki Saito TEXT: HIROAKI SAITO PHOTO by AFLO
最終更新:Safari Online