手近な100円ショップに置いてあり、100円+消費税で200グラム程度(店によっては500グラムほども)買える「重曹」。愛用している人も増えていますが、まだ使ったことがないものの気にはなっていた、というような方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、この重曹の主に掃除分野での活用法・おすすめ掃除箇所についてご説明します。とにかく100円+消費税という極めてお手頃なコストで試すことができるところがメリットとして大きな重曹、ぜひ参考にしてみてください。
「重曹」とは、「重炭酸曹達(重炭酸ソーダ)」を略した呼び名で「炭酸水素ナトリウム」「重炭酸ナトリウム」ともいいます。化学式 NaHCO3で表されるナトリウムの炭酸水素塩で、舐めるとえぐしょっぱく感じます。
見た目は細かい白い粉状で、水には溶けにくい性質をもっています。加熱すると、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水に分解されます。水溶液が微アルカリ性(pH8.2)を示す、いわゆる「アルカリ剤」のひとつです。
ところで、これからこの「重曹」の主に掃除での使い方をお話ししますが、界面活性剤が含まれていない重曹は実のところ「洗剤」ではありません。
洗剤ではなく「洗浄剤」という位置付けになります。細かいことですが、ちょっと頭の片隅に残しておいてください。
重曹の特長(水に溶けにくい、アルカリ、泡立たない)を活かせる、重曹と相性のいい代表的な掃除ポイントを3つご紹介します。
通常「クレンザー」として売られている洗剤等に含まれる、主な研磨剤はケイ酸鉱物などですが、それと比べて重曹は柔らかいため、比較的マイルドなクレンザーとして活躍します。
中でも調理中に出る油汚れと合体して焦げ付く、キッチン、コンロの五徳やステンレス鍋の裏。魚焼きグリルの水受けや、オーブンの天板。こういった<油+焦げ>汚れを落とすのに重曹の粉(そのまま)が使えます。
掃除の方法としては、汚れを軽く水で濡らしたところに重曹粉を適宜ふりかけ、スポンジやブラシ等普段の掃除道具で擦り磨きます。油と相まって若干の鹸化が生じ、白濁しながら油焦げが溶け落ちていきますので、よく水で濯いで仕上げます。
住まいの汚れに伴う悪臭には、しばしば「酸っぱ」さが感じられます。この原因の一つに挙げられるのが皮脂による汚れで、酸化するだけでなく、汚れを放置することで細菌に代謝され(汚れを食べられ)さらに臭くなることがあります。
「酸っぱい」系には、生ゴミをはじめとしたあらゆるゴミ周りなど、ずばり腐敗が生じている汚れ箇所もあります。こういった箇所の酸臭を重曹のアルカリが中和して抑えることができます。
皮脂汚れには重曹水を使うと便利です。水(ぬるま湯)1カップに小さじ1程度の重曹を溶かし、スプレーボトルなどに入れるといいでしょう。手近な布やペーパーにこの重曹水を吹き付け湿らせたもので汚れを拭き取ります。
皮脂は布に染み込みやすいもの。汚れたファブリック類、ラグマットなど洗濯しにくいものでも重曹水での「拭き掃除」を行うと汚れが取れるとともに臭いが軽減します。ただ念のため色落ちやシミが生じないよう、目立たないところで試してから行ってください。
酸っぱ臭い生ゴミ入れ、ゴミ箱などには、重曹粉をそのまま振り入れるか、重曹水をスプレーしてぼろ布などで拭き上げます。
⒊「あぶら」+「におい」+「焦げ」三位一体系
あるときにはマグカップのミルクを温め、あるときには冷凍ひき肉を解凍、またあるときには冷ご飯をチン、またあるときにはパンを焼き、クッキーを焼き、シチューを煮込み……。
いわゆるキッチン家電の中でも電子レンジ、ないしオーブンレンジの活躍の幅広さと頻度の高さは群を抜きがちかと思いますが、その分、複合的な汚れ、においに悩まされている方も多いのではないかと思います。
この油脂混じりの汚れ、汚れの焦げ、相まった臭い対策に「重曹」が役立ちます。
前述の重曹水に薄手のタオルをしっかりと浸し濡らして軽く絞ったものを電子レンジに入れ、600Wで2分程度温めると、庫内に蒸気が充満するのでそのまま10分程度放置してください。
時間が経ったら必ずゴム手袋をし、温まったタオルを使ってレンジ内を拭き掃除します。いつか爆発した何かの焦げ汁、籠もった臭いごとズルズル落ちるので、そのタオルを使って満遍なく庫内を拭き、濯ぎ拭きまで行えればばっちりです。
実は重曹、いわゆる「お風呂場」の汚れにはあまり適していません。お風呂場などの主だった水回りの汚れというのは、水道水や石鹸カス由来の金属成分が主体となったアルカリ性の汚れであるため、同じアルカリの重曹は効果をあらわしにくいのです。
また、汚れに細菌などの微生物が多く含まれることが考えられる箇所にもあまり向きません。「重曹粉」「重曹水」では消毒はできないためです。
アルカリが変色を促してしまう、木製の漆器、畳、銅製品、アルミ製品などにも使うことができません。例えば酸臭対策として、畳の上の嘔吐跡などの掃除に使うと、黄色く変色してしまい元に戻すことができなくなるので注意してください。
「アルカリ剤」である重曹は、つまるところ基本的に酸性の油脂、皮脂系の汚れ、たんぱく汚れ、臭いなどに効果をあらわすものです。住まいの中にはそういった汚れの付く箇所が多いことから、「万能の粉」「魔法の粉」などと称されたりもします。
ただ試してはみたものの、期待通りの効果を得られなかったなどで「重曹」を使わなくなってしまうケースも少なからずあります。冒頭で「洗剤ではない」とお断りしましたが、もともと「洗剤」とは似て非なるものである、と知っていて使うか、知らずに使うかの差異でもあるように思います。
「重曹」は成分や性質を理解する人には、きわめて懐深い素材です。自分なりの使い方を見極めた暁にはぜひ100均ではなく、1kg、5kgといった大パッケージでリピートしてみてくださいね。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】