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初のロボット掃除機なのにスゴイ完成度――パナソニック「ルーロ」誕生秘話:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/2 ページ)

 いよいよパナソニック初のロボット掃除機「ルーロ」が3月20日に発売された。そもそも筆者がパナソニックから、初めて実機を見せてもらったのが昨年12月のこと。その時、“三角形”という見慣れない形だったことはもちろん、ロボット掃除機としての完成度があまりにも高かったのでかなり衝撃を受けた。どうして三角形という形を選んだのか? そもそも同社としては初号機でありながら、どうしてここまで完成度を高めることができたのか? 商品担当の鯛多聞氏に話を聞いた。

パナソニックで「ルーロ」を担当している鯛多聞氏

 これまでロボット掃除機といえば、丸形であることが正解であると思われていた。日本国内のシェア8割を米iRobotの「ルンバ」が占めているからだ。ロボット掃除機の代名詞として“ルンバ”という言葉を使う人もいるくらい、その存在感は圧倒的である。掃除能力の高さもお墨付きで、ロボット専業メーカーであるiRobotが、10数年に渡り、何世代もモデルチェンジを重ねてきたから当然といえば当然だ。

 とはいえ、パナソニックの「ルーロ」も発売前のプロトタイプモデルにも関わらず、これまで何度となく撮影したり、実際に自宅で使わせてもらってきた中で、ルンバに退けを取らないほど掃除能力が高いと断言する。

1993年に導入された羽田空港ターミナル向けの業務用ロボット掃除機

 「実はパナソニックも1990年代初頭からロボット掃除機の開発に着手してきた歴史があります。それは業務用のロボット掃除機ですが、羽田空港のフロアを掃除するものでした。フロアを区切って、その範囲を往復走行するタイプのロボット掃除機です。空港という広いフロアを効率良く掃除するために活用されたモデルでした」(同氏)。

初のロボット掃除機なのにスゴイ完成度――パナソニック「ルーロ」誕生秘話:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/2 ページ)

 写真で見ると、そのロボット掃除機は全体的にもっと大きく背も高いモデルであり、家庭用のロボット掃除機とはまったく別物である。もちろん、じゅうたんやフローリングといった床面を掃除するものではないものの、自動でフロアを掃除するというアプローチだけは共通するものだった。

 「その後、2002年に行われた技術発表会の場や2007年の内部検討されたロボット掃除機は、四角形や丸型でももう少し大きくて背が高い家庭用のロボット掃除機でしたが、発売するにはまだまだのレベルだったため、発売するまでには至りませんでした」。

2002年の技術発表会で披露した試作機。世界で初めて安全系および集塵系センサーを搭載した一般家庭向けの自動ロボット掃除機だったという(左)。2007年に試作したロボット掃除機(右)

 パナソニックの掃除機開発の歴史は1950年代に遡る。60年以上の歳月を開発に費やすなかで、世界を代表する掃除機メーカーとして知られるようになった。掃除機メーカーとして、いくらロボット掃除機とはいえ、精度の低いものを発売するわけにはいかないという自負があった。すでに20年以上に渡り、掃除機の開発一筋に携わる鯛氏は言う。

 「パナソニックというメーカー名で掃除機を出す以上、それがたとえ新しいジャンルのロボット掃除機とはいえ、精度が低い掃除機を出すことはできません。だからこそ、他社がロボット掃除機を続々と発売するなかでも、ずっと開発を重ねてきました。ルーロ自体も三角形として開発が始まったのは実は3年前。そこから、三角形がもっともロボット掃除機には向いている形だとこだわり、精度を高めてきました」。

 三角形がどうして最適な形なのか? その根拠を同社は「ルーローの三角形」に求めている。詳しい説明は別枠に譲るとして、それにより丸型よりもより部屋の隅まで掃除することが可能となった。

「ルーローの三角形」−−

 「ルーローの三角形を採用することで、ロボット掃除機の設計上、丸型よりも有利だといえるポイントは、まずはより本体の端にサイドブラシを配置できることです。丸型では入り込めないほど、部屋の隅まで深く入り込めるので、より広範囲を掃除することが可能となりました」。

ルーローの三角形とは?

正三角形の各辺を膨らませたような定幅図形。ドイツ人機械工学者フランツ・ルーローが開発した。正三角形の各頂点を中心に、半径がその正三角形の1辺となる円弧で結ぶことでできる。四角形のなかでも円の中心をズラしながら回転できる三角形であり、高さが一定のまま転がることができるほか、いずれの角も鋭角のため、四角形の角に深く入り込む。

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