「洗濯物は屋外に出し、天日に当てて干す」といったイメージ・固定概念は意外に根強いもの。しかし近年では花粉、黄砂やPM2.5、また防犯、美観や急な天候不順対策として「洗濯物を屋外に干さない」選択をせざるを得ないシーンが増加しています。
そのためもあってか、いまは浴室乾燥機を含む衣類乾燥機の普及率が50%を超えている(※)一方で、いまだ「浴室乾燥機を使うのを躊躇してしまう」「浴室乾燥機ではうまく洗濯物を乾かすことができない」といった声も少なくありません。
今回は浴室乾燥機の上手な使い方、また浴室を含む室内全般で乾きにくい洗濯物がよく乾くようになるコツをご説明します。
浴室乾燥機は、「浴室乾燥機」「浴室換気乾燥機」「浴室換気乾燥暖房機」などの総称で、一般的に浴室の換気と、温風による乾燥や暖房の機能を備えた設備のことをいいます。
換気のみを担う「浴室換気扇」とは一線を画しており、換気、暖房、乾燥のほか、機種によっては送風、涼風、ミストサウナ、カビ抑制、衣類脱臭などといった多様な機能が一台に集約されている場合もあります。
形状としては住まいの新築やリフォーム時に導入するシステムバスに備わったビルトイン(天井埋め込み)タイプのほか、壁掛け、天井付けといった後付けタイプがあり、熱源は、主に電気式とガス(温水)式に分かれています。
入浴に伴う湿気を屋外に送り出す換気のみのタイプに比べ、浴室乾燥機の場合は温風を吹き出すことで短時間での浴室内乾燥がかないます。そのためカビの発生を抑えることができる点などが気密性の高い近年の住宅事情に必要とされ、現在新築住宅の多くには基本的な設備として取り入れられています。
乾燥と暖房はほぼ同じ機能です。この暖房の稼働により真冬の入浴時に起こるヒートショック(急激な温度差による大きな血圧変動)を予防することにつながる点も浴室乾燥機の存在意義として見過ごすことはできません。
ともあれ天候や時間にとらわれず、洗濯物の乾燥(室内干し)ができる「浴室乾燥機」は家事をする上で本来、非常に便利で快適、現実的な設備といえるでしょう。しかし実際稼働させてみると、思ったほど洗濯物が早く乾かない、乾くまで稼働させると光熱費がかかることが気になる、微妙に浴室内に異臭を感じるなどの理由で、「あまり使わなくなってしまう」というケースが意外と多いようです。
浴室乾燥機で洗濯物がうまく乾かないとき。その理由として考えられるポイントは4つあります。
各々のポイントをクリアすることで乾き具合は改善していきます。思い当たる点からぜひ確認し、解消を試みてみてください。
浴槽や浴室内を掃除した直後など、湿り気の多い状態では洗濯物の乾きは悪くなります。洗濯物を干す数時間前に掃除を済ませてしまい自然乾燥させておくか、目立つ水分はスクイージー(T字型水切り)などで拭ってから浴室乾燥機を稼働させるといいでしょう。
浴槽にお湯(水)が貯められたままでの稼働も避けましょう。どうしてもお湯を張った状態で干さなければならない場合は蓋をしっかり閉めてください。お湯に衣類からのホコリが落ちる点にも注意しましょう。
普段、24時間換気扇を稼働させている浴室乾燥機では、浴室内の空気が屋外に排気される際に吸込口フィルターを通ります。浴室乾燥機として使用するときにも、湿った浴室内の空気は同じ吸込口フィルターを通して吸い上げられます。そして電気式なら電気ヒーターで、ガス式なら温水パイプによって温められ、その温風が吹出口から出されます。
この吸込口フィルターがホコリやカビなどで汚れて目詰まりしてしまっていると、この仕組みがスムーズに働かず乾きが悪くなります。また温風も少し臭います。フィルターは換気扇として使っている間にも日々汚れていくので、月に一度は掃除機でホコリを吸い取り、半年に一度ほどのペースで水洗いして(ひどい汚れは中性洗剤で洗って)おくようにします。
浴室内の空気が吸い上げられるとき、浴室外の空気もまた一緒に吸気されます。このとき浴室ドア下部などにある空気取入口(ガラリ)が閉じていたりホコリで目詰まりしている場合、空気が流れず、うまく乾燥できなくなってしまいます。
24時間換気扇の稼働時にも同じように空気取入口(ガラリ)を通して空気が換気扇に吸い上げられているため、ガラリ部分には知らず識らずのうちに多量のホコリが溜まりがちです。日々の換気効率にも大きく影響するので、スティック状の掃除道具などを使用して、定期的に清掃しておきましょう。
ガラリがない浴室ドアの場合は、ドアを1、2センチほど開いておくと良いでしょう。
浴室乾燥機とともに取り付けられている物干しバーは、浴室のサイズにもよりますが1本か2本。そこで普段使いのピンチハンガーなどを利用して洗濯物を干すケースが多いかと思われますが、干す際の間隔が狭すぎたり、厚手の洗濯物の干し位置が適切でないといつまで経っても乾かないことになりがちです。
温風の吹出口から出る風が強く当たる位置に最も厚手の乾きにくい洗濯物が来るように調整し、各々の洗濯物の間になるべく空間が生じるようにくふうして干してみましょう。
そんな乾きにくい洗濯物の代表例によく挙げられるのがパーカー(フード付きのトレーナー)です。厚手の木綿の裏パイル地で、首回りのフード部分は何重にもなっていたりするため、普通に干すとどうしても乾きが遅くなり、汗を吸いやすい部分であることも手伝って異臭が発生してしまうことも少なくありません。そのため専用の干し道具が市販されているほどです。
また同様に厚手のトレーナー地でできた、スエットパンツのウエスト部分なども厚みがあるため、乾いたと思いきやジメッとしていたりしがち。その他、濡れると重量の増すニット類や、パッドのあるものなど厚みのある洗濯物は乾きにくい傾向にあります。とはいえ洗濯乾燥機でのタンブル乾燥は使えないといった場合、どのように干すべきなのでしょうか。
フード付きに限りませんが、厚手の衣類を手近なピンチハンガーなどに干す場合、「逆さ干し」をすると乾燥が早まります。肩部分などを留めるのではなく、上着の裾部分を留めて逆さまに万歳をさせるように干します。ピンチに余裕があれば袖先をそれぞれ別のピンチに挟んで「逆さオバケ」のようにすると良いでしょう。厚手のスエットパンツなども、ズボン裾をピンチに挟んで、ウエストを下にして干します。股の間を空けて「逆さガニ股」のような状態にすると良いでしょう。
伸びやすいニットをピンチハンガーで干す際には、脇の下と裾と腕をそれぞれ摘んで重量を分散するようにし、温風の真下に置いて先んじて短時間で乾かすようにします。パッドの厚い衣類も同様です。物干しバーに直に掛けるなどして優先的に乾かしてしまうようにしましょう。乾くまでの時間が長引けば長引くほど異臭が出やすくなるので注意しましょう。
浴室ではない部屋干しの際にも、洗濯物はできるだけ短時間で乾燥させるのが肝になります。エアコンや除湿機などで部屋の湿度を下げ、同時にエアサーキュレーターを使って洗濯物の真下から直接風を当てることで、乾燥時間は飛躍的に短くなるでしょう。
浴室乾燥機の使用に際し若干難しいこととして、浴室自体のサイズや窓の有無、当日の気温環境、洗濯物の量やそれぞれの素材、また熱源が電気式かガス式かなどにも影響され、完全に乾くまでの時間がなかなか読みきれない点が挙げられます。
使用時間に比例してコストがかかることは否めず、また浴室を本来の入浴に使用しなければならないため、乾かないからといっていつまでも干したままにしておくわけにもいかないという日常的な制約もあります。そのように干すタイミングや時間が制限されることで、つい使用を敬遠してしまうという人もいるのではないでしょうか。
前述したくふうを講じてみることにも意味はありますが、実は浴室乾燥機だけで「全てカラカラになるまで乾かそう」とせず割り切って使うほうが、ストレスも少なく日常的に活用し続けられるかも知れません。洗濯物の湿り気が7割がた飛んだくらいで、ピンチハンガーごと部屋干しに移行させてしまうといった運用方法を取るのです。
浴室乾燥機には、洗濯機からごく短い動線で洗濯物を干すことができ、全自動洗濯乾燥機などでは乾かしにくいデリケートなシャツやお洒落着もシワを気にせず干せ、かつ比較的短時間で乾かせるといった唯一無二の存在意義があります。
せっかくの設備です。諸々のコツを生かし、ぜひ上手に活用してみてください。
※内閣府「消費動向調査」令和3年3月実施分資料より
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun202103.pdf
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】