スポーツは人を熱くする。必死に跳び、走る姿に感動する。でも、跳ぶのが食パン、ランナーが扇風機だったら――。これはものづくり大国日本の、本気の挑戦。ただし世の中の役には一切立ちません。良い子はマネをしないでね。
1月22日と29日は、2週連続で第4弾となる新作が放送されます。午後10時から。
NHKBSプレミアムの不定期の番組「魔改造の夜」は、あほみたいなことをくそまじめにやる。
トースターや扇風機といった、本来の製品のリミッターを外し、とんでもない「モンスター」に造り替える。だから「魔改造」。
トースターで焼き上がるたびに、ちょっとだけ跳ね上がる、あの“飛”距離を競うとどうなるか。
扇風機に50㍍走をさせてみたことも。台車に乗って、よーいどん。自らの風の力だけで進む。奇想天外だけれど、一流の技術者たちが挑戦すると話は変わってくる。
番組は2020年に始まり、第3弾まで放送されてきた。単なる技術の披露ではなく、企業や大学ごとにチームを組んで対決する。
参戦者は、国内トップの大学から世界に名だたる巨大自動車メーカー、気鋭の町工場まで。T大、T社、N産、H技研――。匿名だが、バレバレである。
N産はH技研などライバル2社の出場に刺激を受けて参戦。担当者は「経営陣のゴタゴタはあったけど、ものをつくる力は衰えていないと思いたい」。順位を競うガチンコ対決番組ゆえ、改造には組織の威信がかかっている。
自力走行型お掃除ロボットは、走り幅跳びにトライした。「お掃除を開始します」と自らアナウンスして走り出す掃除機など、個性豊かな面々がそろった。優勝はH技研の「魔破★掃一郎」。助走は掃除しながらゆっくりと。F1レースとは真逆の亀の歩みだったが、突如ミサイルのような瞬発力で跳躍、約12㍍を飛んだ。ものづくりの神さまといわれる創業者のDNAは健在だった。
他にも、クマのぬいぐるみが瓦割りをしたり、子ども向けの赤ちゃん人形が高さ8メートルから垂らされた縄を高速でよじ登ったり。対決はいつも、不可解で珍妙な迫力に満ちている。
製造メーカーはどう感じているのか。手塩にかけて世に送り出した自社製品が、あられもない姿になる事態について。
ある企業は「安全基準とコストの制限があり、私たちメーカーは思い切ったことができない」と明かす。だからこそ、魔改造される意義がある。自社製品の違った一面が見られるため、「不安と緊張の入り交じった気持ちでワクワクしている」という企業担当者もいる。
番組出演者の伊集院光は番組でこう言い切る。「普通は安全で安定で確実でなきゃいけないけれど、魔の世界では失敗してもいい。そこから何かが見える」
なぜこんな番組を作るのか。記事後半では、売れっ子の放送作家がきっかけを語ります。
■竹村武司さんの世界観炸裂(…