ソニーの犬型ロボット「aibo」
ソニーが販売している犬型ロボット「Aibo」は、まるで本物の犬のように飼い主=購入者とのコミュニケーションから日々の成長を楽しめるエンターテイメントロボットです。その愛くるしい姿は本物の犬のよう。初代「AIBO」は1999年に登場し、2006年にソニーのロボット事業撤退と共に市場から姿を消しましたが、サポートが切れたあとも有志などにより延命が計られる例もあるなど愛好者は多くいました。そして2016年に再び「aibo」として登場し、現在も継続的に製品が投入されています。【写真】Macroactが開発中の「Maicat」このaiboに対抗するかのように、韓国でも動物型のロボットが開発中です。Macroactが開発している「Maicat」は猫型ロボット。aiboのように愛玩ロボットとして家族の一員に受け入れたくなるようなかわいらしいロボットです。自律学習機能を備えたMaicatは、飼い主の日々の愛情を受けて学習し、個性的な猫へと育っていきます。Maicatの顔には鼻の部分にカメラ、耳の部分にマイクが内蔵されています。カメラは飼い主の顔の表情をAIが解析してどんな状況でMaicatに話しかけてきているのかを判断、マイクからは飼い主の言葉や声の調子を同様にAIが判別します。そして本体のタッチセンサーにより、飼い主がMaicatをなでる、といった行為に対しても反応していきます。このあたりはaiboと同じように、日々接していくうちにMaicatが成長していくわけです。Maicatはインターネット接続状態では100人、非接続状態では10人の顔を認識するとのこと。外に連れ出し、ネット環境がない場所でも自分や家族、友人を区別してくれるわけです。なお毎月のサブスクリプションサービスが必要になるかなどは現時点では決まっていないようです。ですが日々情報を収集してAIが学習を行うことで育っていくロボットだけに、aiboのように毎月基本料金を払うシステムになるのでしょう。さてMaicatのコンセプトや機能を見ると、aiboとあまり変わらない製品にも見えます。犬と猫の違いはあれど、愛玩できるロボットという点ではどちらも同じ方向を向いた製品でしょう。しかしMaicatはそれだけではなく、家屋内をスマート化する製品としての機能も搭載される予定です。Maicatは1月にラスベガスで開催されたCES 2022に出展し、同イベントのイノベーションアワードを受賞しました。受賞に際して、Maicatはロボットではなくスマートホーム製品としてアワードを受けたのです。Maicatは人がいないときは家庭内を自由に歩き回ります。それにより室内の家具や家電がどこにあるか、といった情報を記憶していきます。またカメラが付いていますから、外出先から室内の状況を見たい、といったときに、すぐにMaicatを通して室内を確認できるわけです。その際に障害物があれば避けて別の部屋に移動する、といったこともできるわけです。また飼い主との日々のコミュニケーションから、飼い主の嗜好を学習していきます。たとえば毎朝7時に飼い主が起きるのであれば、Maicatは自動的に朝7時にアラームを発し、さらに飼い主のそばによって(場合によっては布団の上から飼い主の上に乗る、なんてこともするかもしれません)起こしてくれたりもするでしょう。毎朝コーヒーを飲むのなら、Maicatがスマートコーヒーメーカーに電源ONの指令を自動的に出し、飼い主が起きだしたころにはコーヒーができてる、そんなこともできるようになるわけです。現在のスマートホームはスマートフォンにアプリを入れ、アプリ経由で電源のON/OFFやメニューを選ぶ、といった操作を行っています。いずれはAIが利用者の嗜好を判断するようにもなるでしょう。しかしスマートホームのアプリは家電を使うとき以外は操作することはありません。そのため個人の嗜好を学習するにしても、その頻度はあまり高くありません。一方、Maicatなら普段はペットとして接することで、飼い主の行動を日々学習していきます。ペットだからこそ「愛玩する」という行為が生まれ、そこから利用者の嗜好や生活パターンの情報が積み上げられていくのです。aiboもすでに家電との連携を行う機能が公開されています。日立の家電やソニーのTVとの連携が行えるといいます。Maicatは韓国の製品だけに、すでに数多くのスマート家電を出しているサムスンやLGの製品と連携することも期待されます。スマートホームはユーザーが声やアプリを使って家電をコントロールしていましたが、数年後にはペット型ロボットが本人に変わって快適な室内環境を整えてくれる、そんな時代がやってくるかもしれません。
山根康宏