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気がつけばフェードアウト?  ビデオカメラの歴史を振り返る

 JVCケンウッドが2月1日、2022年3月期 第3四半期の決算説明資料を公開した。それによれば、民生用ビデオカメラの生産は2021年10月に終了しており、そのリソースを別の成長事業へシフトしていくという。日本では販売されなかった初代iPhone(左)とiPhone 3G(右)。いずれも純正アプリではビデオ録画はできず、録画機能を持つようになったのは次のiPhone 3GSから まだやってたのか、と思われた方も多いと思う。確かに昨今、他社も含めビデオカメラの新製品が出ていないため、とっくに事業終了したと思っているかたも多いと思うが、新製品を出していないから事業が終わっているわけではない。旧製品を製造して出荷し続けている限りは、企業にとっては事業終了ではないのだ。 したがってJVCケンウッドの生産終了は、在庫があれば最後まで出荷はするだろうが、なくなり次第事業終了と受け止めていいだろう。 民生用ビデオカメラは、日本が圧倒的大差で世界をリードした分野だった。国内の家電メーカーは、ほとんどビデオカメラに参入した。パッと思いつくだけでもソニー、パナソニック、キヤノン、JVCケンウッドはかたいところだが、シャープ、日立製作所、東芝、三菱電機、三洋電機も過去に製品があった。 ビデオカメラは、アナログからデジタルへ、テープからディスクへ、ディスクからメモリへと、スチルカメラ以上に記録フォーマットの歴史そのものをなぞって成長してきた。今回はビデオカメラ発展と衰退までの流れをまとめてみたい。

気がつけばフェードアウト?  ビデオカメラの歴史を振り返る

アナログ時代

 民生用ビデオカメラをさかのぼると、Uマチックに行き当たる。 Uマチックはソニー、松下電器産業(当時)、日本ビクター(当時)の3社で規格化されたもので、カメラ部とデッキ部が別々だった。製品発売は1971年とされているが、その後放送業界で大幅に導入が進み、報道においてENG(Electric News Gathering)という革命を起こした。今では当たり前のビデオ取材だが、それ以前はニュースでも16mmフィルム取材が主力だった。 その後、コンシューマー分野ではテープデッキとして「ベータマックス vs. VHS戦争」が起こったが、ビデオカメラでは「8mmビデオ vs. VHS-C戦争」だった。ソニーがVHSよりも小型なベータカセットを記録媒体に使ったムービーカメラをヒットさせると、ビクターがVHSを小型にしてアダプターでの互換性を持たせたVHS-Cを投入した。ベータ vs. VHS戦争がムービーカメラでも起こったわけだが、ソニーなどのベータ陣営は、さらに小型な8mmビデオで対抗するという展開になった。 放送業界でも、「ベータ vs. VHS戦争」があったのはご存じない方も多いだろう。1984年ごろ、ENG用カメラシステムとして、ソニーが押す「ベータカム」と、松下電器とNHK技術研究所が共同開発した「M」の対決が起こった。テープサイズがまさにベータとVHSだったわけだが、1年程度でベータマックス優位で決着した。なお「M」はその後改良した新フォーマット「M II」へ進化し、NHKには大量導入された。 8mmビデオ vs. VHS-Cは、1989年のソニー「CCD-TR55」が「パスポートサイズ」として大ヒットしたことで、決着が付いた。パスポートサイズとはいっても、当時のパスポートは今のより大型である。また縦横はパスポートと同じサイズだが、厚みは相当あった。 8mmおよび後のHi-8は、据え置き型デッキとしては普及しなかった。今の感覚では、テレビにつながれているデッキでテープが再生できないと不便だろうと思われるかもしれないが、当時はカメラそのものをテレビにつなぐのが主流で、メディアを取り出して別機器で再生という利便性にはまだ世の中が追い付かなかった。

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最終更新:ITmedia NEWS