29 01
ユーザーに自社の価値を見いだしてもらうには?製品と価格の明確な戦略を立てる【製品・価格戦略検討フェーズ】

今回は基本戦略の1つである「製品(商品)・価格戦略」について解説します。戦略を策定する理由や、商品戦略・価格戦略にどのような設定方法があるかなどを詳しく説明していきます。

Contents
  1. 製品と商品の違い
  2. 顧客とお客さまの違い
  3. 戦略と戦術の違い
  4. 商品戦略
  5. 価格戦略

戦略の解説に入る前に、これから使用する言葉の意味を統一しておきます。

製品と商品の違い

製品や商品という言葉をよく耳にすると思います。しかし「製品と商品の違いは?」と聞かれると、答えるのは案外難しいですよね。

製品とは

製造工程から出荷するまでの品物のことを製品と呼びます。基本的に製品も商品も同じですが、見る立場や段階によって呼び方が変わると思ってください。

商品とは

仕入れから販売される品物のことを商品と呼びます。原料を加工して製造されるものは製品、製造されないものは商品と呼びます。農産物や水産物は加工して製造しているものではないため、商品と呼びます。

「卒塔婆屋さん」のように、製造から販売まで行っている企業の場合は製品と商品が混在していますが、ECサイトでは品物を販売しているので、今後は商品で統一します。

顧客とお客さまの違いについて

「顧客」と「お客さま」という言葉は曖昧に使われがちですが、厳密には「顧客」の「顧」とは「かえりみる」という意味合いから「2回目以降購入したお客さま」という意味になります。

新規顧客、既存顧客などと呼ばれることもあり、「顧客」でも「お客さま」でも通常は問題ありません。しかし、計画書段階ではまだ商品の購入に至っていないため、「お客さま」に統一します。

戦略と戦術の違いについて

「戦略」や「戦術」といった言葉はビジネスの場で度々使われます。ただ、両者についてなんとなくわかるものの、違いについて誤って認識している場合もありますので、整理しておきましょう。

戦略とは

戦略とは「目的達成に向けた、大局的な視点での方向性」のことで、企業では経営者や役員レベルの人が考えるべき内容です。

戦術とは

戦術とは「目的達成に向け、戦略に則した具体的な作戦・施策」で、企業では部・課・担当者レベルの人が取り組むべき内容です。

会社としての目的があり、目的を達成するために複数の戦略があり、各戦略にいくつかの戦術があるといったように、戦略・戦術は親子関係のように必ずつながっています。

なぜ戦略を策定するのか

戦略がなければ、当然戦術を立案することはできません。戦術とは「何をするのか」という具体的な施策のため、戦略がなければ「何をして良いのか」「何から手を付けたら良いのか」がわからず、前に進むことができません。また、施策に対する効果を途中で検証することもできません。

ビジネスでは結果を出さなければならないので、何も考えずに突き進むのは危険です。まず何か施策を行い、検証するにしても、方向性や戦略は必要不可欠です。

戦略が立てられれば、具体的な施策に落とし込むこともでき、検証やその後の軌道修正も筋が通ったものになります。

商品戦略

商品戦略は「コンセプト」「商品自体」「商品の付帯機能」という3つの要素に細分化して考えます。

コンセプト

コンセプトでは、「誰が使うのか」「いつ使うのか」「お客さまにとっての価値」を決めます。

商品自体

商品の特徴、デザイン、品質、ブランド、パッケージのことを指し、これらは商品のコンセプトによって大きく変わります。たとえば、日用品と高級品ではまったくコンセプトが異なります。

ユーザーに自社の価値を見いだしてもらうには?製品と価格の明確な戦略を立てる【製品・価格戦略検討フェーズ】

ECでは梱包もお店への信頼度に大きく影響しますので、商品サイズに合った梱包、破損しない梱包を考えましょう。

商品の付帯機能

商品自体ではなく、「保証」「決済方法」「配送方法」など、商品購入時に付帯する項目です。コンセプトや商品自体と比較して軽視されがちですが、お客さまの満足度を左右する重要な項目になります。

保証

商品の返品・交換・返金が可能かどうかという項目です。特に衣料品などは試着ができない分、交換できることはお客さまにとって安心感につながります。

決済方法

お客さまの事情に合わせた決済方法を用意することで、カートからの離脱防止につながります。

企業向けの商品では請求書後払いを取り入れると良いでしょう。後払いでは、手数料が発生しますが、決済代行業者を通じて請求書を発行すれば未払いリスクを回避できます。

また、最近では「Amazon Pay」「楽天Pay」「Paypay」などのID決済も必須になってきています。ID決済を導入することで、ECサイトで購入する際に離脱の原因になるお客さま情報入力を省略でき、利便性が高くなります。

配送方法

配送業者は荷物の大きさや配達地域など得意な分野が異なるため、自社の商品やお客さまに合う配送業者を選ぶようにします。日時指定ができるとお客さまの利便性が高まります。

他店とは違うサービスで差別化を図った事例

どこでも購入できる商品は価格重視で選ばれる傾向があるため差別化が難しく、普通の売り方ではなく、視点を変えた売り方が必要となります。視点を変えた売り方で有名な事例を紹介します。

地方の小さな書店と聞くと、経営は厳しいだろうと感じるかもしれません。本は定価販売で、どこで買っても同じ価格。品ぞろえは大手書店やネット販売には叶いません。

ところが、あるサービスで全国から注文が殺到している書店があります。それは、北海道砂川市にある「いわた書店」というお店です。

「いわた書店」では、店主が予算1万円で利用者1人ひとりにオススメの本をセレクトして送ってくれる「一万円選書」というサービスを実施。その内容が話題となり、全国から注文が殺到しています。

書籍販売会社の情報ではなく、一冊一冊店主が読んでいる本のため、お客さまの信頼度や満足度が高く、リピーターの確保にもつながっています。また、本の好みや居住地などのお客さま情報もお店の財産になっているのです。

差別化が難しい商品でも、売り方によっては十分にチャンスがあるという事例です。

価格戦略

京セラや第二電電(現在のKDDI)の創業者で、日本航空(JAL)の再建を担当した有名な実業家、稲盛和夫氏の言葉に「値決めは経営である」とあります。それほど、価格戦略は企業にとって核となる重要な要素です。価格戦略は既存商品の一般価格設定と新商品の新商品価格設定に大別できます。

一般価格設定

一般価格設定は①原価志向(製造コスト基準) ②需要志向(カスタマーバリュー志向) ③競争志向(競合価格基準)の3つに分けられます。

1.原価志向(製造コスト基準)

製造にかかる原価を計算し、一定のマージンを加えた価格を設定する方法で、以下の3つに分けられます。

①コストプラス価格設定

実際にかかったコストに、利益を上乗せして価格を算出します。建設業やシステム開発など、事前にコストが明確に算出されない際に用いられることが多い方法です。コストは後から上乗せするので、予め価格の制約がなく、売り手側にコストダウンの意識が働かないという問題があります。

ECにおいては、購入する際に価格を明記する必要があり、後から価格が変動することはないため、この方法は現実的ではありません。

②マークアップ価格設定

仕入れ原価に一定のマークアップ(上乗せ)を行う方法で、流通業で一般的に用いられています。薄利多売の製品では薄く、高級品では厚く利幅が設定される傾向です。

商品を仕入れして販売するECサイトにおいては、最も一般的な価格設定方法となります。

③ターゲット価格設定

想定の事業規模を元に、一定の利益が確保できるように価格設定を行います。化学品や自動車など、製造設備の稼働率がネックになる業界で採用されます。

製造して販売するECサイトである「卒塔婆屋さん」も、この価格設定を一部採用しています。

2.需要志向(カスタマーバリュー基準)

お客さまが認識する価値に焦点を合わせて価格を設定する方法です。

①知覚価値価格設定

「売れる価格帯」に合わせます。マーケティングリサーチなどにより「売れる価格帯」を見つけ出し、その価格帯に合わせるようようです。もし、その価格帯より原価が高い場合はコスト削減を行います。

先述したターゲット価格設定では、自社のコスト構造が価格に反映されてしまい、実際の適正価格(売れる価格帯)を逸脱してしまう場合があるため、同一商品の価格調査をして、価格設定を考えます。ただし、安ければ良いという訳ではなく、品質や付帯機能も考慮し、お客さまに適正だと思ってもらうことが大切です。

②需要価格設定

市場セグメントごとに価格を変化させる方法です。学割や深夜料金など、お客さま層や時間帯、場所によって異なった価格を提示します。

サプリなど単品量販系のECサイトでよく見られる価格設定です。初回半額や購入回数・金額でお客さまをランク分けし、割引するといった手法で、新規お客さまやリピーター獲得に有効です。ただし、定期的に割引販売(セール)をしていると通常時に売れにくくなるため、実施回数には注意が必要です。

3.競争志向(競合価格基準)

競合製品の価格を踏まえて価格を設定するやり方で、下記の方法があります。

①入札価格

入札によって価格を決定し、売り手・買い手の交渉で決められないという特徴があります。市場メカニズムで決まらない場合に有効。買い手は、最低価格の売り手を探すことができます。

「ヤフオク!」などが該当し、ECサイトではあまり見かけません。

②実勢価格

競合の価格を十分に考慮した上で価格水準を決定する方法で、多くの業界で用いられています。寡占的な業界では、首位企業が価格を決め2番手以下はその価格を基準とします(業界全体の価格設定に影響を与える企業を「プライスリーダー」と呼びます)。

電化製品などは非常に有効である反面、中小零細企業では大手に太刀打ちできません。そのため、設置サービス、保証などのサービス面、お役立ちコンテンツなどを作り差別化します。

一般価格設定の方法について解説してきましたが、どの価格設定方法を選べば良いか迷いますよね。ECサイトにオススメの方法は、「カスタマーバリュー基準」でしょう。

カスタマーバリューはお客さまの価値が判断材料となります。そのため、競合価格などを基準にするときのように自社でコントロールできない外的要因ではなく、相対的な基準となるからです。

つまり、お客さまがあなたのお店に対して価格に見合う価値を見いだせるような仕掛けを作れば、カスタマーバリューを上げることが可能です。

では、一体どうやってカスタマーバリューを上げるのか。次回はその方法について解説します。