01 03
「子育てしたくなるまち日本一」を目指す塩尻市が実現した保育業務の効率化

保育ニーズの多様化がもたらす「業務の複雑化と増大化」問題 提供:NTT東日本-関信越

塩尻市こども教育部 こども課 保育企画係の主任、保田悠介氏はこう振り返る。

「"子育てしたくなるまち日本一"を目標に掲げて保育行政を行っている当市としても、早急な課題解決の道を検討しておりました」

そこで、以前は紙ベースで申請書の受け付けを行っていたのを、長野県が提供している「ながの電子申請サービス」を利用して、PCやスマートフォンなどオンライン申請に切り替えることとなった。

また合わせて、申請内容を保育システムに入力する業務についても、入園を調整するためのエクセルデータの作成作業をこれまでの職員の手作業から、RPAによる自動化を図ったのだ。

保育士の業務負担軽減による保育の質の向上を目指して

申請書の受け付け業務については、RPA導入などにより効率化を図ることに成功したものの、保育業務に関するさまざまな課題が依然として山積していた。なかでも改善を求める声が大きかったのが、以下の6つの課題であった。

・手書き書類が多い、保育現場におけるPC不足により書類作成が自由にできないなど、書類作成業務の負担が大きい。・保育計画等の様式が園ごとに異なっていたため、保育士が異動する際に戸惑いを感じていた。・緊急的に長時間保育を利用する家庭が多く、日々の登降園時間の管理から請求のための月締め処理など請求管理業務の負担増。・毎朝の欠席、遅刻等の電話対応に多くの手間と時間がとられる。・週1回程度の園だより、クラスだより等の印刷から配布にかかる業務の負担増(配布日に欠席していた園児への配布対応含む)。・保護者との連絡やコミュニケーション手段が緊急メールや連絡帳ぐらいしかない。

「特に深刻だったのが、手書きの書類が多かったことによる業務負荷の増大でした。PCで書類を作成するにしても、保育園に十分な数がなく、そのために順番待ちをしなければならない状況だったのです」と保田氏は話す。

これを受けて市では、保育士などの業務負担の軽減を図るとともに、業務負担が軽減された分の時間をこども達と向き合う時間に充てることにより、保育の質の向上を図るべく、新たなICT活用の検討を開始したのだった。

「ICT活用による保育園の業務効率化の実証実験を県で実施しており、当市も参加したのですが、保育だよりの作成・配布などを大幅に効率化できるなど、ICT活用がもたらす業務負荷軽減の効果を実感していました。そこで、恒久的な保育人材不足に対応するためにも、保育士が働きやすい職場づくりに努めて、保育士の確保、定着につなげていくことを目指しました」(保田氏)

クラウド保育支援サービス導入で数々の課題を一気に解決へ

塩尻市では複数のサービスを比較検討。その結果、2020年末に導入を決定したのが、幼保/児童施設向けクラウド型ICTシステム「CoDMON(コドモン)」だ。

幼稚園教諭・保育士・先生の事務業務をICTで効率化し、働き方改革と、保育・教育の質向上を支援するツールであるコドモン。同システムは全国47都道府県の約8,800施設に導入され、毎日約17万人の先生・保育士が利用し、塩尻市のような地方自治体との契約数も176(約1,000施設)に及んでいる。

「子育てしたくなるまち日本一」を目指す塩尻市が実現した保育業務の効率化

「全国の保育園の現場の仕事の多くは、手書き作業を中心とした『アナログなまま』この何十年も変わっていません。そこをICT導入によって効率化するとともに、余裕ができた時間を保育や教育の質の向上に充ててもらおうというのがコドモンのコンセプトです。クラウド型なのですぐに導入でき、全国の先生が常に最新の機能を使えるのも大きな特徴です。ここが使いにくい、こういう機能が欲しいなど、現場の先生方からの指摘を新機能や機能改善に役立てていますので、例えば昨年度の機能改善は年間100件以上となっているなど、全国約17万人の先生に育ててもらっているようなものですね」(コドモン 普及推進部 公共事業推進担当 浅野由識氏)

検証期間を経て、現場からの高い評価を確認

選定後も塩尻市では、2021年1月から7月にかけてコドモンを3施設に導入して、市内の全保育園に広げるための検証期間とした。そして現場の保育士や保護者からの評価が高かったこととから、7月に全園導入を決定したのである。

「現場の生の声を聞いてから全体へと拡げたかったので、長い期間をかけて3つの保育園で検証を行いました」と保田氏は言う。

コドモン導入に当たっては、全園共通の様式の統一化を行うとともに、コドモンを活用した新たな運用ルールづくりを実施。また、保育士への説明会も繰り返し行われるとともに、各保育園には新規のPCが配布され8月には市内の15園すべてへの配布が完了した。

ただし、検証期間には新型コロナウイルス感染拡大の影響により、県をまたいでの移動が制限されたことから、コドモン社のスタッフが市へ訪問できない状況となった。そこで、市から信頼の厚いNTT東日本-関信越の担当者が、現地対応や調整を行うとともに、保育士にむけた説明会を市と連携して実施したのだった。

NTT東日本-関信越 長野支店 第二ビジネスイノベーション部 テクニカルソリューション担当の杉浦亮氏はこう振り返る。

「コドモンのサービス導入に当たり、保育士の皆様の負担をいかに軽減するか腐心しました。各園で操作研修会を開催したり、サービス運用開始日に保護者の方々に対して登降園打刻のやり方を説明したりするなどしてスムーズな運用開始ができるよう精一杯フォローさせていただきました」。

また、塩尻市こども課 保育企画係の嵯峨将太氏も次のように評価する。

「NTT東日本-関信越には、保育園で発生したシステムやタブレット端末等のトラブルや、システム運用に関する問い合わせに対して迅速かつ丁寧に対応してもらっています。保育士へのシステム説明会をはじめとした手厚いサポートのお陰で、スムーズにスタートできました。各園でシステムを使用するためのネットワーク環境の構築から、システム運用に必要な端末設定など、すべてに関わってもらっていることで、保育業務支援システム導入の一元管理ができていると実感しています」。

ちなみに、セキュリティを確保するために、コドモンへの接続についてIPアドレス制限を使ってアクセスを制御しており、保育園からコドモンへのアクセスは、市内の保育園を結ぶネットワークを経由して行われるようになっている。

保育現場のさらなる業務効率化に向けて

保育支援システムであるコドモンを導入したことにより、塩尻市では、緊急長時間保育料の請求管理業務に費やされていた時間や、朝の欠席連絡に対する電話対応時間、園だよりやクラスだよりの印刷から配布にかかっていた時間を大幅に削減できたとともに、保護者の利便性向上も実現した。

市ではコドモンを先行導入した保育園の1つで職員アンケートを実施しており、そこでも以下のようにシステムを高く評価する声が寄せられている。

・保護者への連絡・お知らせが簡単にできる・欠席受付などの電話対応が減った・手書きの書類作成が減り、書類作成が楽になった・職員間の情報共有がしやすくなった・サービスが向上し保護者が喜んでいる

「特に朝の出欠連絡が以前は電話ベースだったのがアプリでできるようになったことや、これにより何もしなくても自動的に集計できる点などが、保護者や保育士の双方から使いやすいと評価してもらっています。あと、アプリだと時間を気にせずに欠席の連絡ができるし、外出中にも連絡が受け取れてありがたい、という保護者の声も多いですね」(保田氏)。

こうした成果を受けて市では、 現場でのサポートや様式見直し、未完成様式の登録など、コドモンを活用した保育計画作成への対応も図っていく構えだ。合わせて、新たに活用が見込めるコドモンのメニューも検討しているという。

「基本的には、今後は紙ベースのやり取りは廃止していく方向で考えています。例えば、保護者と園とのやりとりには紙ベースの連絡帳を使っていますが、連絡帳の機能はコドモンにも備わっているので、ゆくゆくはそちらを中心にしてくつもりです。連絡帳というのは子どもに関する大事な情報でもありますので、それが電子化されれば子どもの成長の思い出としてしっかり残していけるので、保護者にとっても嬉しいはずですから」(嵯峨氏)。

また、NTT東日本-関信越 長野支店 第二ビジネスイノベーション部の営業担当課長代理 二木哲氏は、「保育士の皆さまの中には『ICTが苦手』という方や、コドモン導入により運用が変わり大変と思われている方もいると考えております。せっかく導入いただいたシステムを便利に使っていただけいるようしっかりサポートしていきたいですね」とコメントする。

そして最後に保田氏と嵯峨氏は、「これからも、ICT活用などを積極的に行いながら、保育現場のさらなる業務効率化と保護者の方々にとっての利便性の向上を図り、保育の質的向上につなげていきます」と声をそろえて力強く語った。