20日にららぽーとBBCCで開業したノジマのマレーシア1号店(同社提供)
家電量販店大手のノジマは、三井不動産がマレーシアの首都クアラルンプール中心部で手掛ける商業施設「三井ショッピングパーク・ららぽーとブキビンタン・シティーセンター(BBCC)」にマレーシア1号店を開業した。2019年にシンガポールの家具・家電小売り大手コーツ・アジアを買収し、同社を通じて東南アジア事業を展開してきたが、「ノジマ」でのマレーシア進出は初めて。今年第2四半期(4~6月)には2号店を出店する予定で、ブランド認知の向上を図る。 今月20日に開業したららぽーとBBCCに出店した1号店の店舗面積は2,456平方メートル。店内には商品を体験できるコーナーを多く設け、日本のノジマ店舗のように店員が顧客のニーズに合わせた接客を行う「コンサルティングセールス」を実践する。 ノジマの広報担当者によると、今後の出店目標などについては非公表だが、今年第2四半期には三井不動産がスランゴール州セパンのクアラルンプール国際空港(KLIA)敷地内で運営するアウトレットモール「三井アウトレットパーク クアラルンプール国際空港セパン(MOP KLIAセパン)」に2号店を出店する予定。 ノジマは19年にコーツ・アジアを子会社化。同社を通じて、シンガポール、マレーシア、インドネシア、カンボジアに計66店舗を展開している。マレーシアではコーツの店舗を45店舗運営しているが、「ノジマ」での進出後も東南アジアの消費者になじみがあるコーツの店舗は維持する方針。その上で、「ノジマ」の出店によりマレーシアでの認知度を上げていく考えだ。 コーツはマレーシアの広範な地域で店舗を展開している。ノジマは今後、配送や店舗運営などのオペレーション面でコーツと協力を進める予定。「機会があれば、地方でのノジマ店舗の展開についても模索していきたい」(広報担当者)という。 ノジマはコーツと共同で今春、シンガポールの繁華街オーチャードに商業施設「コーツ・ノジマ・ザ・ヒーレーン」を開設する予定で、昨年11月にコーツの店舗を先行開業している。 ■オンラインと実店舗の両輪 マレーシアでもコロナ禍や電子商取引(EC)の拡大などで、家電量販店を取り巻く状況は変化している。ただ家電やデジタル製品の購入に際しては実際に商品に触れたいという消費者も多いことから、ノジマは引き続き実店舗のニーズは高いとみて、オンラインと実店舗の両輪で販売拡大を目指す。 こうした戦略について、地場市場調査会社リテール・グループ・マレーシア(RGM)のタン・ハイシン社長は「昨今、家電販売店の多くがオンラインショッピングのプラットフォームを提供しているが、多くの消費者はまずインターネットで情報を調べ、その後実店舗で使用感などを確認してから商品を購入する。オンラインで販売されている電化製品の多くは低価格製品や小型の調理家電などに限られ、アフターサービス面でも実店舗には及ばない」と指摘する。 また同社の調査では、新型コロナの流行による休業期間があったにもかかわらず、過去2年で家電を含む「家具・DIY用品・電化製品販売店」の市場規模は拡大した。過去の不況期には見られなかった傾向で、在宅勤務用のデジタル製品や自宅で快適に過ごすのに役立つ家電の需要が旺盛になったためとみられるという。 一方、マレーシアの証券系シンクタンク、クナンガ・リサーチのアナリスト、アーマド・ラムザニ・ラムリ氏は「コーツ買収は、ノジマが東南アジアの家電市場の開拓に自信を持っていることの表れだろう」とした上で、「(地場同業の)センヘン・ニュー・リテールも、ノジマの進出を脅威に感じているに違いない」と話す。 今月25日にマレーシア証券取引所のメイン市場(1部市場)に上場するセンヘンは、新規株式公開(IPO)で調達した資金で新規出店や既存店舗の改装を進め、25年までに国内市場のシェア3割を獲得する目標を掲げている。 センヘンが都市部での展開に強みを持つのに対し、地方や郊外にも多くの店舗を構えるコーツは、中・低所得者層を主なターゲットとする。「こうした層は不況かどうかなどにはあまり頓着せず、仕事と現金があれば購買意欲は旺盛だ」(アーマド氏)という。 同氏は、コロナ後は地方から消費が盛り上がることが予想されるとし、ノジマも中・低所得者層が好む分割払いを取り入れるなどすれば、販売を伸ばせるとの見方を示す。