米国の半導体のサプライチェーンを見直す大統領令に署名したバイデン大統領
年初から指摘され始めた世界的な半導体の不足。当初は自動車産業に限定した話題だったが、今では我々の生活に必要不可欠なものにまで影響を与えている。入手が困難になった家電や機器をはじめ、不足の要因を取材した!⇒【画像】国内でも多くの企業に影響が出ている
「都会の戸建てに暮らしていて、銭湯通いを強いられるとは……」都内在住の会社員(49歳)は嘆いた。青天の霹靂は2週間前だ。「給湯器が故障し、お湯が出なくなり、風呂も沸かせなくなった。すぐに業者に修理を頼んだのですが、『半導体不足で部品の在庫がないので4月まで直せない』と」業者が帰り際に渡してきたのは一枚の紙きれ。そこには近所の銭湯のリストが書き込まれていた。「今、ほぼ毎日10分かけて家族で銭湯に通ってますが、今の季節は湯冷めしてしまうのでキツい。妻は顔だけでも家で洗いたいというので、銅管をグルグルに巻いた自作の給湯器をYouTubeを見て必死に完成させましたよ」
半導体不足が指摘され始めてはや1年。事態は解消されないどころか、悪化の一途をたどっている。米サスケハナ・フィナンシャル・グループの調査によると、世界の半導体のリードタイム(発注から納品までに要する時間)は10月時点で21.9週と、1月の14.1週から大幅に増加しているのだ。長引く半導体不足の背景について、『電子デバイス産業新聞』編集長の稲葉雅巳氏はこう解説する。「ひとつはコロナ禍でのテレワークやオンライン学習、巣ごもりなどといった生活の変化に伴い、電子機器や家電の需要が増えたこと。そして、米中摩擦によって半導体調達に不確実性が高まるなかで、余分に在庫を確保しようという動きが高まっていること。主にこの2つの相乗効果と言えるでしょう」半導体はもはや日常生活の必需品であり、家電製品の供給にも影響を及ぼしている。都内の家電量販店で販売員に聞いてみた。「半導体不足の影響が特に大きいのはテレビ、洗濯乾燥機、冷蔵庫の3つ。テレビは年末商戦と重なり、低価格モデルを中心に品薄になっていて2か月待ちもザラ。年明けになるともっとかかるでしょう。逆にドラム式洗濯乾燥機と冷蔵庫は大型の高価格帯が品薄。いずれも3週間~1か月待ちです。一方、エアコンは買い替えシーズンではないので、在庫はありますが来年3月に各社から出る新製品の供給は不透明な状況です。あとはテレワークで品薄が続いているのは家庭用プリンター。こちらも半導体不足の影響で機種によっては2か月待ちになっています」再び前出の稲葉氏。「アップルやサムスンなど、サプライチェーンを確立し、半導体メーカーへの交渉力が高い最先端分野の大企業は、まずまず在庫が確保できる一方で、日本の電機メーカーはなかなか調達できないという状況にある。白物家電は、半導体のなかでも成熟した部類のものを使うため、そもそも半導体不足という事態を想定しておらず、状況を悪くしているのです」
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