世界レベルでこれまでの生活様式を変えたコロナ禍。繰り返される外出制限措置、長引くリモートワーク、自宅で過ごす時間の増加により、人びとの意識も行動も大きく変化しました。
その中でも特に、小さなお子さんを持つママたちは、コロナ禍前とは、育児や生活に対する価値観を柔軟に変えつつあるようです。
電通ママラボは、全国のママたちに支持されているアプリ「ママリ」(※)の声をまとめた「家族ノート」のデータをコネヒトと共同で分析。さらにママラボで独自調査も実施して、ママたちに芽生えた新しい価値観を探りました。
この連載では3回にわたって、コロナ禍のママたちの意識や行動の変化をお伝えします。第1回は、ママのお金に対する意識と消費傾向の変化についてです。
【ママラボ】ママと子どもの本心と真摯(しんし)に向き合い、課題解決策を提案するワークタンク。「母親の視点にこだわって、次世代家族マーケットを活性化したい」という考えのもと、2008年に設立。ママ・子ども・家族の向かう先を予測し、多くの企業や団体に事業課題や社会課題を解決するためのリアルなインサイトとソリューションを提供している。
コロナ禍の影響で働き方が変化し、家計にも大きな影響があった中で、ママたちのお金に対する意識にも新しい兆しが読み取れます。
グラフ1は、ママリのアプリ内で検索された言葉をグラフにしたものです。ママたちのコミュニティの話題の中で、第1回緊急事態宣言以降、「お金 ない」といった検索が増えていることがよく分かります。
ママラボが2021年12月に実施した「コロナ禍に立ち向かうママたちの意識調査」でも、「コロナ禍で(収入が不安なので)より価格(コスパ)を重視して選ぶようになった」という項目に対して「あてはまる」「ややあてはまる」と答えている人が、全体の5割近くになっています。(グラフ2)
特に「あてはまる」と答えている割合が20代のママで18.8%、30代のママで17.5%と若いママたちで高い傾向を示しています。
もともと令和時代のママたちは、日常生活のすき間時間をうまく使って、家族や自分の買い物、情報収集をすべてスマートフォン上ですませる「手のひら消費」に抵抗感がない世代です。
また、近年の断捨離ブームやシンプルでミニマルな暮らしのトレンドを受け、ママ達の間で必要以上に「モノを持たない」意識が高まっています。
中古でも自分の家族のニーズに合致していれば価値があると判断し、家の中で必要のない物を売り買いできるアプリを活用するなど、既存の大手流通以外の新しい購買チャネルをうまく利用してコストを抑えて賢く買い物をしています。ステイホーム中に生活を見直す中で、より「価格によって得られる価値のバランス」の意識が高まっているのかもしれません。
また、電通ママラボ実施の「コロナ禍に立ち向かうママたちの意識調査」によると、買い物をする際にポイントを効率よくためて使う「ポイ活」をすることが増えていることが分かりました。
コロナ発生後に利用が増えたサービスについて聞いたところ、「オンラインショッピング」が29.1%で1位、「食事のテイクアウトやデリバリー」が26.1%で2位。次いで「ポイ活」が19.4%と3位にあがっています。(グラフ3)
そのほか、ポイント運用が7位で4.4%となっており、ポイントで買い物や運用をするという、新しい消費活動や家計運用の考え方が浸透してきていることも分かります。収入が減る中でも工夫して家計を上手に回しているママたちの様子がうかがえます。
近年は、スーパーやコンビニなどリアルな場面ではもちろん、ネット通販での買い物やアプリの利用などさまざまな場面でポイントをためることができるようになってきました。キャンペーンに合わせて購入時にアプリを利用することでポイントをため、そのポイントをどう賢く利用するのかがママたちの関心ごとになっています。
「ママリ」でも、2020年の緊急事態宣言以降「ポイ活 おすすめ」というワードの検索が増えており、ポイ活に関心が高まっていることが分かります。(グラフ4)
また、ママリに寄せられたコメント事例(図1)を見ると、ママたちがどんなポイ活をしているのかがよく分かります。
ポイ活の方法は、楽天市場やLINE、d払い、クレジットカード払いなどのほか、スマホ上でためられる仕組みなど、複数を使い分けているようです。
「ガソリン代に使う」「薬局の特売の時に使う」など生活費で使う場合もありますが、「日用品を買って、自分の洋服や靴はポイントで買う」「アプリのクーポンでスイーツ買いました」など、ポイントだからこそ罪悪感なくちょっとした自分へのご褒美にも使っているようで、節約をする中でも、生活を豊かにする工夫をしていることが分かります。令和のママたちは「ママが我慢をしつづけると、家族のためにもならないのでは?」「無理なく続けられるもっといい方法を探そう!」という気持ちを大事にして、生活を楽しんでいるようです。
次に、20~30代のママの購買特徴を見てみましょう。
「コロナ禍になってから新たに買い足したもの・サービス」についての質問(グラフ5)では、20代~30代ママで「子ども用の預貯金・保険・投資」の割合が高くなっています。子どもの未来を見据えての貯蓄対策をしっかりしているようです。
また、「子ども用の衣類、服飾雑貨(※抗菌などの対コロナ機能が付いたもの)」「レジャー・旅行」「自動調理器具」が、40~50代のママと比べて高くなっていることも特徴です。
また、数は多くありませんが自動調理器具も20~30代のママたちは、興味があるようです。材料を切って入れるだけで料理ができるこのような商品は、たとえ値段が高くても、息苦しい生活の中で、家族が笑顔でいられるには必要と思えるものなのかもしれません。
ママリの「家族ノート」のデータ(グラフ6)でも、「ドラム式洗濯機」や「ホットクック」など、高価格帯家電についての検索が2021年第2回の緊急事態宣言下のステイホーム時期に一気に増え、一度落ち着いたのちに、再び2021年の7月以降の第4回緊急事態宣言下のステイホーム時期以降に増えています。
その他にも、ママリの「家族ノート」の「ステイホーム期間に買ってよかったもの」(図2)によるとカラオケマイク・庭の遊具など遊び道具に加え、ホームベーカリー・パスタマシン・無煙ロースター・たこ焼き器など自宅で外食気分を味わえるアイテムも話題に上っているようです。
ステイホームや在宅勤務などで、家族で過ごす時間が増えたからこそ、「家族時間を豊かにしてくれる」ものが、コロナ禍には重要な購入基準になってきているといえるでしょう。
今回は、ママたちを取り巻くお金の意識と消費傾向の変化を見てきました。コロナ禍で大変な中でも少しでもママたちは前向きになれるように工夫しながら、自分も楽しめることを見いだそうとしていることが、よく分かりました。
締めるところは締め、多少高くても家族時間を豊かにするものには投資をする。そんな柔軟なママたちの姿が見えてきました。
次回は、コロナ禍による「子どもの習い事」に対する意識の変化についてお伝えします。