23年度までの4か年計画「NISSAN NEXT」
日産は今、再生の道を歩んでいます。 2018年11月、当時、日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。しかも、日産にとって不幸だったのは、ポスト・ゴーン体制が生まれたばかりの翌19年暮れに、コロナ禍という厄災が世界を襲ったことでしょう。ゴタゴタの日産に、世界的な脅威の発生。最悪のタイミングです。【画像】「NISSAN NEXT」に続く、「Nissan Ambition 2030」では営業利益率の向上も狙う そのため19年度の日産の決算は散々なものとなってしまいました。世界での販売台数は前年比マイナス10.6%の約493万台に。もちろん収支は赤字で営業損失は405億円です。さらに、翌20年度は約420万台にまで販売が減少します。過去10年ほどをかけて、日産は世界販売台数を400万台規模から500万台後半にまで伸長させてきましたが、その伸びた分すべてが、きれいになくなってしまうほどの減少。まさに衝撃的な数字です。 そこで日産は、大きな決断を下します。構造計画です。
20年5月28日、日産は23年度までの4か年計画「NISSAN NEXT」を発表します。収益性の改善と、将来にわたって成長するための事業構造改革です。驚くのは、この計画実施のために、6030億円もの構造改革費用および損失を計上していること。大赤字を出してでも、生まれ変わろうというわけです。 この「NISSAN NEXT」のポイントは2つあります。1つが「規模の最適化」、そして2つ目が「選択と集中」です。 「規模の最適化」は、端的にいえばリストラです。生産能力とモデル数を減らします。具体的にいえば、生産能力を20%ダウン、モデル数も69から55車種に約20%削減。これにより固定費を18年比で3000億円削減します。 「選択と集中」では、コアマーケット(市場)/コアプロダクト(製品)/コアテクノロジー(技術)を定めて、そこに集中します。 コアマーケットは、日本、中国、北米です。逆にいえば、それ以外の欧州などの市場は、現状維持が目標です。 コアプロダクトとは、モデル数減少と表裏一体で、競争力の低いモデル(ダットサンなど)や車齢の長いモデルを打ち切り、競争力の高いものに交替させます。集中するのは、日産の得意とする、CセグメントとDセグメント、電気自動車、スポーツカー。そして、それ以外のモデルの開発は、アライアンスのパートナーであるルノーや三菱自動車にお願いします。日本でいえば、軽自動車の開発は三菱自動車が行うことになりました。また、商品のライフサイクルも車齢4年以下に短くし、22年までに12の新型車、23年度までに8車種の電気自動車を投入すると予告しました。 実際に、その計画発表後、日産は「キックス」をはじめ、「アリア」「ローグ」「マグナイト」「ナバラ」、インフィニティ「QX55」「ノート」「フロンティア」「パスファインダー」「キャシュカイ」「エクストレイル」「ノートオーラ」、インフィニティ「QX60」「フェアレディZ」「タウンスター」と数多くの新型モデルを世界市場において発表・発売しています。なんと予告した12よりも多い新型車の数です。 ちなみに日本市場でいえば、20年6月販売開始の「キックス」は、日本市場として10年ぶりの新顔。逆にいえば、以前のゴーン体制下での日産は、それだけ長い間、日本に新型車を投入していなかったのです。 そして、最後の「コアテクノロジー」は、電動化と自動化です。23年度までに、年間100万台以上の電動化技術搭載車の販売を目指し、先進運転支援システム「プロパイロット」を世界20の市場に投入して、「プロパイロット」搭載車の販売150万台とするというのです。電動化技術というのは、電気自動車のEVだけでなく、日産のハイブリッド「e-POWER」も含んでいます。20年に登場した新型「キックス」と「ノート」が、どちらもハイブリッド専用車となり、ガソリン・エンジン車がないのは、「NISSAN NEXT」が理由だったのです。
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