私は現在、産業技術総合研究所(産総研)でInternet of Things(IoT)や人工知能(AI)の各ユニットを統括していますが、もともとはロボットの研究をしていました。私の研究は住宅そのものをロボット化できないかというところから始まっていて、主に2次産業で発展してきたロボットをサービス産業にシフトさせる研究をしてきました。
ロボット研究の方向性として、高いインテリジェント性やいろいろな機能を1つのロボットに集約して、人間のように何でもこなすロボットを作るというものがあります。その典型例がヒューマノイドです。もう1つ、ロボットの全ての機能を一体に集約しなくても、外部環境との連携することでロボットサービスを提供する方向性もあります。私は後者の、環境とロボットを融合し、ロボット自体のコストを下げて、ロボットを低価格に提供できるビジネスモデルを目指しています。
ロボットのシステムとして、昔は1つのコンピュータでいろいろなセンサーを統合制御するのが一般的でしたが、今のロボットはアクチュエータやセンサーなどにそれぞれCPUが積まれていて、それが内部でネットワークを介してつながっているだけです。すなわちアクチュエータやセンサーなどの各ロボット要素部品について、部品間の通信環境が良ければ一体型である必要性は薄くなるため、各要素を部屋や建物などの外部環境に分散させることができるのです。
たとえば、ロボット本体の目で認識しなくても、天井などに設置しているカメラにネットワーク接続し物体を察知することも簡単にできますし、その方がロボット自体のコストは下げられると思います。これを環境のロボット化といい、基本的には住宅そのものをロボット化するのと同じです。