キッチンに投影した「プロジェクションAR」のイメージ
カシオ計算機が、デジタルカメラやプロジェクターの開発で培ってきた光学設計技術や映像技術を生かし、スマートホーム分野への展開に本腰を入れ始めた。住宅設備や照明などに小型なプロジェクションモジュールを組み込み、映像を投影することで、住空間の利便性や新たな映像体験を実現しようとしている。 カシオは、組み込み用の小型プロジェクションモジュール「LH-200」を9月上旬に発売。価格は税込み19万円前後だ。見た目は小型プロジェクターといった外観だが、通気の悪い限られた設置場所でも冷却できる性能や、防じん設計を施すことで、粉じんの舞う工場などでも使えるようにしたのが特徴になる。
組込用の小型プロジェクションモジュール「LH-200」
その応用展開の候補として熱い視線を注ぐのが、スマートホーム分野だ。例えば、家庭内のさまざまな機器がIoT技術によってつながるスマートホームのキッチンに組み込み、調理スペースの一部に料理レシピの映像を投影する。 従来はスマートフォンでレシピを検索することが多いが、「調理の際、スマホを触ることが不衛生など問題点もある」(古川亮一イメージング統轄部長)。手や体の動きのほか、音声操作との組み合わせなどで、スマホに触れることなく料理レシピを閲覧・操作できるようにしたい考えだ。新型コロナウイルス流行で新しい生活スタイルが定着する中、プロジェクターを使った拡張現実(AR)「プロジェクションAR」で、衛生・清潔ニーズに応えるタッチレスの価値を訴求していく狙いもある。 カシオは2018年5月にデジカメから撤退。昨年4月からは段階的にプロジェクターの戦略転換を進めてきた。これらで培った技術やノウハウを結集し、新たなビジネスを創出しようと挑んでいる。 カシオは新規事業で24年3月期に売り上げ300億円を掲げている。その一翼を担うべく、プロジェクション事業は中期的に100億円を稼ぎ出すのを目標に設定する。 スマートホーム分野では、住設機器への組み込みや照明設備との一体化、単独での天井設置など、他企業と共創しながらLH-200での実現を検討中。プロジェクションARを活用し、浴室やトイレでの映像体験や、ガレージなどの半屋外空間での駐車ガイド支援、映画や趣味の映像と照明を組み合わせた新しい体験などの提案を目指す。
電波新聞社 メディア事業本部 報道部
最終更新:電波新聞デジタル