せっかくの快晴、外に干した洗濯物。でも取り込もうとすると氷のように冷たく、「アレッ、もしかして、乾いてない……?」。冬場、しばしば生じるこの冷たい生乾き洗濯物の処遇。いったいどうするのが正解なのでしょうか?
偏西風の影響で太平洋側の地域は晴天が多い冬。空っ風なんていうくらい風もそこそこ強いので、洗濯物もカラッと乾きそうなものですが案外そうでもありません。なぜなら、洗濯物の乾燥に必要なのは、お天気でも見た目の(低い、相対)湿度でもなく、洗濯物を干した空気に、水分を湛える力があるかないかだからです。
この、空気のもつ水分を湛える力のことを飽和水蒸気量といい、気温が低いほどその量は減ります。つまり気温の低い冬の空気はいかに乾燥していたとしても洗濯物の水分を奪いにくい、つまり乾かしにくいのです。
外干しした洗濯物を生乾きにさせたくないならば、まず<屋外に干す、干さない>の判断には、天気や湿度のみならず、その日の最高気温の予報を参考にするのがいいでしょう。寒い日にはそもそも外には干さない、と決めることです。
ただ各家庭の洗濯物干し場の状況は異なりますので、個々で経験則を蓄えましょう。たとえば筆者宅の場合は気温10度を超える日は晴天なら屋外干しで問題ありませんが、10度を切ると結果が怪しいため部屋干しに切り替え、大物の洗濯は延期します。
洗濯物を効率的に部屋干しする際にもある程度の気温と低湿度、また風の流れが必要です。空気清浄機は動かしても加湿器の稼働は必ず止めましょう。できるだけエアサーキュレーターや扇風機を併用、干した洗濯物の中でも厚手のものに直接風が当たるようにします。洗濯物はなるべく隙間を大きくあけ、風を受けやすいようにくふうして干してください。
エアコンの風向きによっては洗濯物に直接当てることができることもあります。干し場の制限がなければそれも一つの手ですが、くれぐれもエアコンの吹き出し口をじかに塞ぐような干し方はしないようにしてください。送風を妨げることはエアコンに余計な負担をかけ、故障に繋がりかねません。
また冬でも、エアコンをかけていても、つねに24時間換気システムは運転させたままにし、気密性の高い家の中の空気を新鮮なものにしておきましょう。
ハンガーごと生乾きを取り込む場合には、屋外干しのち数時間部屋干し、サーキュレーターの風など当てて残りの水分を乾燥させます。ピンチハンガーなどから外し取り込んでしまってから湿り気に気づいた場合は、乾いたバスタオルと一緒にふんわりまとめておくと湿り気が抜けやすいので試してみてください。
襟や脇や鼠蹊部など汗をかきやすい衣類の箇所には皮脂などによる汚れが蓄積して細菌が繁殖しやすく、これを洗濯で落としきれないことと乾燥するまでの時間が延びることでさらに細菌が増えるなどし、結果的にいやな臭いが出てしまうことがあります。このように一度臭くなってしまった衣類は早めに手を打たないと負のループに陥りがちですが、100%の解決にはならないものの幾つかの対処法はあります。
まずは汗をかいた厚手の衣類は、着用後に必ず乾燥させるくせをつけることです。汗であれ洗濯水であれ「水分」を維持してしまうので臭いの元になる細菌が増えるのです。とにかく「さっさと乾かす」ことが衣類を臭くしない第一歩です。
つぎに、自宅の洗濯機の洗濯槽の清掃をします。市販の洗濯槽クリーナーを購入し、洗濯をしない夜間などを利用して槽洗浄、そもそも洗濯機内にいる細菌を減らします。槽のみならず、ついでにごみ取りネットや洗剤投入口の汚れも洗っておくようにしましょう。
臭う衣類がタンブラー乾燥可能なものであれば、数回連続して乾燥の際に熱処理をするのも細菌対策になります。自宅に乾燥機がない場合には、コインランドリーの利用も検討してみてください。ただ、縮みなどの恐れのある衣類の場合にはドライクリーニングに出しましょう。細菌のエサになり、酸っぱい悪臭のもとにもなる皮脂汚れはドライクリーニングの溶剤でよく落ちます。
気温が上がり洗濯物が乾きやすくなったなら春の到来も近い……しかし今度は花粉飛散が始まってしまいますね。たかが洗濯、されど洗濯。そして毎日のことなので、無理せずできることを淡々と行っていきましょう。