家電の世界的ブランド「ソニー」が自動車産業に参入するとのことで、そのコンセプトモデルを電子機器の見本市「CES」で発表し大きな話題となった。
CESとは、米国のラスベガスで開かれる電子機器の見本市だ。1967年にニューヨークで第1回が開催されたが、1995年からはラスベガス恒例の行事となっている。 情報通信機器や、最新の家電製品などを世界のメーカーが紹介する場として機能してきたが、近年は新車やその技術を発表する場としても活用されるようになった。2022年は、自動車関連企業が400社以上出店する盛況ぶりだ。そして日本のSONYが、SUV(スポーツ多目的車)仕様のEV(電気自動車)を公開し、EVへの本格的な取り組みを検討することを吉田憲一郎CEO自ら発表したことが今年の大きな話題にもなった。 世界の自動車メーカーが、自動車ショーだけでなくCESで最新のクルマを公開するようになった背景にあるのは、次世代車と呼ばれるEVなどが自動運転の機能なども備え、従来のエンジン車と違った価値観を求められるようになったからだ。 EVも自動運転も電気というエネルギーを通じ、情報や通信技術を駆使して独自の価値を生み出そうとしている。電気、情報、通信という分野は、クルマ以外の機器や家庭電化製品などと共通する技術であると同時に、消費者にとって共通の利便性をもたらす。
EVは、クルマとしてではなく、社会のインフラを担うという側面もあるが故に、CESなどでアピールすることは大きな意味があると言える。
EVが自動運転を手に入れる際には、情報・通信技術が欠かせず、それによって実現可能となる。また、電気は、単に動力としてEVを走らせるだけでなく、EVから家庭や施設、あるいは送電網へ電気を供給することも可能にし、エンジン車時代の移動手段としてだけでなく、社会基盤のひとつの駒として位置づけられるようになる。 こうなると、自動車だけのショーで最新の商品性をみせるだけでは不十分であり、暮らしと密接な日常のなかでのクルマの価値を見せることが重要になる。 EVになれば、建物のなかへも走り込むことができるようになり、道路と建物という社会資本の境界線も希薄になり、人の移動の仕方にも変化が起こる可能性がある。そこに自動運転が加わることにより、安全性はもとより、共同利用などにおける情報伝達や利便性の向上が期待でき、クルマでの移動が、所有する以上に快適になる可能性がある。そうなってはじめて、超小型モビリティのような車種も活躍の場が見いだせるのではないか。 好きなクルマを所有することがなくなることはないかもしれないが、個人の移動をより便利で快適にするのがEVの自動運転による共同利用であり、それによって道路と建物の境界が連続性を持つという意味で、電子機器の見本市=CESでクルマを発表する意味が深まるのである。
御堀直嗣
最終更新:WEB CARTOP