「ヘキサゴン」と呼ばれる六角形のステアリングホイールなど個性的ながら居心地のよい運転席まわり
BMWはじつは電気自動車のパイオニア的メーカーだ。クルマ好きなひとには、スポーティなクルマのメーカーとして知られているものの、先進技術の開発にも熱心。その好例が2021年11月に日本発売されたピュアEV「i4」。乗ると、BMWが新時代を迎えた感がある。【写真】BMWのピュアEV「iX」車体
パワフルでスムーズ。このクルマをごく簡単に表現するとしたら、こんなかんじだ。加えて、なんだか楽しい。パワフルなモーターによる走りのよさと、スムーズな動きと快適な乗り心地。加えて、内外のデザインに凝りまくっている。私が最初にこのクルマを見たときは、ゴールドをアクセントに使ったエクステリアの意匠にびっくりした。車内に入ると、今度は、レザー(とそれに似た)素材でくるまれたような空間と、大きなタブレットのような液晶モニターが、シンプルだけれど、それゆえにじつに印象的。シート調節やギアセレクターやインフォテイメントシステムのダイヤルなど、主要な部品はクリスタル。遊んでいる、といえばいいのか、新しいクルマとしての主義主張が込められていると、解釈すればいいのか。観るひとの解釈しだいで楽しめる。成り立ちは、全長4955ミリ、全高1695ミリの、BMWが「SAV(スポーツアクティビティビークル)」と呼ぶSUV的なボディに、3000ミリと長いホイールベースの組合せ。前後の車軸間の距離をこれだけ長く拡げられたのは、エンジンよりコンパクトにまとめられた電気システムのおかげだろう。前後に1基ずつのモーター搭載だ。
日本に導入されるのは2車種。240kWの最高出力と630Nmの最大トルクを持つ「iX xDrive40」と、385kW、765Nmの「iX xDrive 50」だ。BMW車でいえば、4.4リッターV8搭載の750iの750Nmを上回る。私が今回、日本自動車輸入組合(JAIA)が提供してくれた機会を利用して試乗したのは、よりパワフルな「50」である。なによりまず、新しいなあと思うのは、ゴールド色のドアオープナー。そこから、このクルマがいままでとは違う体験を用意してくれているのではと期待がふくらむ。シートに腰を下ろして、輪郭が六角形のステアリングホイールを握り、情報システムを管理する「カーブド・ディスプレイ」(12.3インチと14.9インチが一体化)。オーナーになって、このクルマと毎日のようにつきあったら楽しそうだなと思わせるものがある。各部はそれなりに目を惹くものの、BMWではiXのデザインの特徴を「シャイテック Shy Tech」と定義する。時々目にする言葉なので、読者のかたは先刻ご承知かもしれない。代表的な製品といえば、iPhoneやiPad。機能がこれみよがしに表面に出ていないプロダクトだ。iXでも、たとえば先述のカーブドディスプレイは、速度やバッテリー残量はいうにおよばず、ナビゲーションや音楽やメールその他の情報をとりにいける。「アレクサ」などを使って、いわゆるスマート家電を車内から音声操作することもできる(「エアコンつけといて」とか)。でも、呼びかけなければ、たんなる湾曲した板のまま。
最終更新:Pen Online