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米下院民主党のEV税額控除案、米系メーカーに有利な控除額引き上げに日系メーカーなどから反対の声(米国)

米国下院民主党は9月13日、上下院で審議中の3兆5,000億ドル規模の投資計画の財源となる歳入法案(2021年9月15日記事参照)に、電気自動車(EV)購入の際の税額控除額について、1台当たり現在の7,500ドルから、最大1万2,500ドルまで引き上げる案を盛り込んだ。しかし、その条件として、労働組合を持つ拠点で組み立てられたEVであることなどを設けており、労働組合を持たない日系メーカーを中心に波紋が広がっている。

今回の法案では、1台当たりの基本控除額4,000ドルと、バッテリー容量に応じた控除額3,500ドル(注)に加え、労働組合を持つ拠点で組み立てられた車両の購入に対しては4,500ドルの控除が定められている。さらに、組み立て工程での構成部品の50%以上が国内生産品で、動力として搭載されるバッテリーセルの組み立てが国内で行われている場合には、500ドルが上乗せされる。対象は、車両総重量が1万4,000ポンド(約6.35トン)未満の新車で、2022、2023年販売車は7キロワット時(kWh)以上、2024年以降は10kWh以上のバッテリーを搭載し、外部充電が可能な車両となっている。

米下院民主党のEV税額控除案、米系メーカーに有利な控除額引き上げに日系メーカーなどから反対の声(米国)

税額控除とは、支払うべき税金から控除額を直接差し引く制度のことで、事実上の割引だ。今回の法案では、控除申告が可能な収入の上限が、配偶者との合算申告の場合は80万ドル、世帯主のみでは60万ドル、その他の場合(扶養家族など)は40万ドルと定められている。さらに、車両価格にも上限が定められており、乗用車(セダン)は5万5,000ドル、バンは6万4,000ドル、スポーツ用多目的車は6万9,000ドル、ピックアップトラックは7万4,000ドルとなっている。また、現行規定にあるメーカー販売台数20万台の控除対象上限が撤廃されることから、既に控除対象外となっているゼネラルモーターズ(GM)とテスラへの適用が再開することになる(「オートモーティブ・ニュース」9月13日)。

この法案に対し、全米自動車労働組合(UAW)のレイ・カリー会長は9月11日の声明で「バイデン大統領が擁護するEV部門での高給の組合の雇用を支えるのに大いに役立つだろう」と述べ、法案が超党派の支持を得ることを望んでいると述べた。

一方で、日系メーカーやEVメーカーのテスラなど、非組合メーカーからは反対の声が上がっている。トヨタは歳入委員長らに宛てた書簡の中で「今回の草案は、組合を組成しない選択をした米国の労働者を差別することで、電動車両の配備を加速させるという目的を二の次にしている」「不公平であり、誤りだ。この露骨に偏った提案を拒否するよう願う」と述べたと報じられている(CNBC9月14日)。ホンダも13日に発表した声明で「下院歳入委員会が、勤勉な米国の労働者が作ったEVを、単に組合に所属しているかどうかだけで区別する不当な方法で、税制優遇措置の拡大を提案したことに失望している。われわれは議会に対し、組合をインセンティブに結び付ける差別的な言葉を予算調整案から削除するよう要請する」と強い反対の意を示した。

(注)2026年12月31日以前に販売される車両の場合は、バッテリー容量40キロワット時(kWh)以上、2027年1月1日以降に販売される車両は50kWh以上が対象。

(大原典子)